2009年8月1日(Sat) 2009年8月、盛夏と言いたいところですが・・・。:-ブラックジャックと呼ばれて-
今日からいよいよ8月です。今夏は多方面において記録的な出来事が多くありませんか。梅雨明けの遅さ、衆議院議員選挙が夏にあるなどです。先の西日本・九州を襲った豪雨も記憶に残る激しさでした。その時の被害ですが、皆様におかれましては如何でしたか?全国各地に東奔西走する私は、交通機関遮断の影響を少なからず受けてしまい、連日の予定手術を100%遂行することが出来ませんでした。各地域の患者様にご迷惑をお掛けしてしまい、ここにお詫び申し上げます。体力・気力・集中力・持久力は誰にも負けません(正確に言えば負けたくありませんの意です)が、お天道様だけには勝てません。残念無念です。
ところで、私も24歳で医師になって以来、今日まで走り続けて、現在53歳、医師歴満29年となりました。患者の皆様や病院スタッフ内外から、とてもそんな歳には見えない、年齢(実年齢いや暦上の年齢)を聞いて驚く、とよく言われますが、確かに自分でも心身的に疲れることあまり知らずで、30歳代のフィジカル コンディションが維持されているかな、と感じています。時々その若さの秘訣は何ですか、と問われますが、自分でも正直よく分りません。敢えて申し上げるなら、外科医として、「信念」、「使命」、「自覚」を持って、美容外科手術という、人様を幸せに出来るクリエイティブな仕事に没頭出来ているからだろうか、と思うのであります。
周囲から若い、と言われることの他に、患者様から「ブラックジャックに似ている」とのお言葉を頂くことも少なからずあります。若い人は知らないかもしれませんが、ブラックジャックとは、御高名でいらっしゃる天才漫画家、手塚治虫氏(私の出身高校の大先輩)の名作シリーズの一つで、そこに主人公として登場する天才外科医です。その彼に似ている、と言われて正直とても複雑な気持ちになります。バーチャル世界の有名人と比較され困惑する様な、畏れ多く恥ずかしい様な、嬉しい様な、強い恐縮感を抱くような・・・等々です。
しかし僭越ながら、アニメのヒーローと比べるのも変ですが、リアル/バーチャルの違いはあれど、確かに似ているところはありそうだな、と思います。その類似点として、1)団体行動が苦手、2)個人活動を好む、3)覚えある腕を使っての100%自由診療を施行する、4)実利より自分の信念を最重視した診療をする、5)全国各地で手術、執刀する、6)仕事は少数精鋭主義で行う、7)生活臭が希薄と言われがち、8)政治にはあまり興味がない、9)仕事をする以外の嗜好が少ない、等々が挙げられそうです。
逆に相違点としては、もちろん沢山あるでしょうけれど、彼が読者に見せた、鏡を見ながら自分の身体を自分で手術出来る器用さは、小生さすがに持ち合わせておらず、その点は羨ましく思うところです。高難度の手術をあっという間に仕上げる手早さにも驚きです(バーチャル世界には敵いません)。性格も大きく違いがありそうです。私は感情が顔に表れやすい熱情的(過ぎる?)医師と思いますが、ブラックジャックが持つ、外科医特有とも言えるクールな、さばさばした雰囲気(オーラのようなもの?)を学ぶべきかもしれません。
上記の手術の手早さに関してですが、これについて少し述べたいと思います。手術は早ければ早いほどよい、と若い時から先輩から教えられて来ました。確かに熟達すればするほど、自然に手術は早く出来るようになりますし、合併症も起こりにくくなると思います。しかしそれは、整容を最重要視する美容外科手術には全て当てはまるでしょうか。顔や体の造り、皮膚・筋肉・骨格構造は、人により全く千差万別です。それに逐一対応しながら、患者様の細かいご要望に応えるべく、手作業で作品を丁寧に仕上げていくのが美容外科手術です。折角手術をお受けになられるのだから、精一杯こだわって自分の技術を提供してあげたい、と私は考えるものですから、どうしても手術時間は当初定めた所要時間より延長となりがちです。そのため予定がずれてしまい、その後の予約患者様をお待たせしてしまい、ご迷惑をお掛けすることが時々あります。この事におきましては、本当に申し訳ないと常々感じ恐縮しております。外科医にとっての患者様への手術は、茶人が客にお茶をふるまう一期一会の接遇と類似だから、と言い訳をさせて頂ければ幸いです。
また前述で、ブラックジャックと同じく政治にはあまり興味がない、と言いましたが、正しくは関心が冷めている、という気持ちが本当でしょう。自民党、民主党‥どの政党が政権を担当してくれようが、民意の代表である政治家先生達・大臣殿が、肝心の行政の中心にいる、庶民感覚の乏しい、私利私欲、省益しか考えない官僚・お代官様達を100% コントロール出来ないでは意味がありません。国民が義務としてきっちり納税している、この血税を徴収して当然とする、まるであぶく銭感覚で無駄使いするのを清く正すべきです。義務を果たしている国民にしっかりと政府が行政上の見返りで応えないでは、官僚栄えて国滅びるの図式となるでしょう。この異例とも言える今夏の大選挙で、政権政党が変わるかもしれません。ただ思うに、悪政とされた幕末からやっと期待出来る明治政府に変った、ところが実際には治世がもっと悪くなってしまった、と語られた島崎藤村の「夜明け前」のような事態だけには陥らなければよいのですが・・・と案じるのは私だけでしょうか。